「おっはよー、雅!」
「ん、オハヨ」
そして今日も、始まる現実。
ハジマリ。++side 斑咲
「おっす!」
「ん〜、はよ」
「おは〜」
「おは〜」
為される挨拶に一つ一つ応対しながら、私は学校へ向かった。
この急な坂道もそろそろ慣れてきたかもしれない。もう1年にもなるもん。
私の学校は県下有数の進学校で、頭の良い子が沢山そろってる。
そしてその分、変わった子も沢山。
頭の良い子には変わった子が多いなんて、誰が言い出したんだろう。強ち間違いじゃない所が凄いと思うよ、うん。
現にホラ、私の友達も。
「おっはろぉん、みぃやびぃ♪」
“ぶぉんっ”
やけに明るい挨拶とともに私の頭に向かって繰り出される鞄。
因みに角が金属でコーティングされてるヤツだから、当たると結構なダメージになるだろうね。
でもまぁこれも毎日の事。ひょいっと軽く右にかわしてやる。
「オハヨ、優。結構な挨拶を有難う」
「きゃぅんっ、また避けられちったよ〜」
え〜っと、先ずはこの変なテンションの子を紹介しとこうかな。
優、って言ってね、髪の毛真っ赤に染めた(校則違反なんだけどな〜)、私の親友。
親友、の筈なんだけど、何故か毎日私の命を狙ってくる恐ろしい女の子。
序に言うと、こんな髪の癖に成績はいつも学年5位以内。こっちの方が恐ろしいかも。
……え?その前にする事があるだろうって?
ああ、ゴメン。自己紹介、してなかったっけ。
私、雅。ミヤビって言うの。
もうすぐ二年生になるけど、一応まだ高校一年生。
後は、まあ…ちょっとした秘密を二つ程持ってます。まあそれは追々、ね。
「みやび?み〜や〜び〜?」
「んんっ、何よ優」
「べっつに〜。またあの顔してたから」
「あの、顔ね……」
優曰く、私は偶にふとおかしな顔をするらしい。
まぁ、それ言われるのはいつも私が『あの事』を考えてる時なんだけど。
おかしな顔、っていっても、女の子がプリクラ撮りに行く時にするあの顔じゃないよ?
何か、
「みやびんってさ〜、たまーに空っぽの顔するよね?」
なんだって。
これ言われた時の私の気持ち、想像してみて?
自分の一番隠しときたい所、やられちゃった。
そう、私のちょっとした秘密なんだけど。
私、何故か満たされないんだ。
優と話してても、お母さんの作った御飯食べてる時も、ずっとずっと。
楽しくない事はないんだけど、何処か物足りない。
心臓の所にぽっかり穴が開いたような感じかな。
だから私、ずっと淋しかったの。誰にも其処を埋めてもらえなかったから。
でも、こんな事誰にも言えない。勿論優にも。
だって、言ったらあの子絶対に責任感じちゃうでしょ?
優ってさ、あんな髪の色してる癖に凄く責任感が強いの。
そんでもって、お人好し。
あの子に言ったら絶対に自分を責める。
だから、私は独りのまま。
でも、今は大丈夫。
ここからが私の、もう一つの秘密。
私、大好きな世界を持ってます。
ベッドの中に現れる、不思議な少年が連れて行ってくれる、私の世界―――。
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