壊れかけてしまったなら、支えてみせる。

壊れてしまったなら、直してみせる。





方法++side 鈴丸





恐れていたコトは、とりあえずまだ起こっていない。でもいつ起こってしまうかわからない。

安堵と不安の波が、止め処なく押し寄せては僕を侵食していく。


それでも1つ確信できたことがある。それは、


    雅サンは生きている。


てコト。

だけど彼女の姿は見えない。声だけの存在。


僕はその声を辿って、今は声だけの存在である彼女がいるであろう場所をつきとめた。

そこはこの「夢」の世界の行き止まりであるところ。この先なんて、あるハズない。

でもそこに、その先に、彼女の声はいた。


「雅サーーーーーーーン!!」

『何ー!?夢前君!!』


壁越しの会話。僕はその壁に向かって大声で呼びかける。

ちゃんと雅サンに僕の声が届くように。

返事を返してきた雅サンの声は、最初聞いたものよりも幾分はっきりしているようだ。

けど、

どことなく、いつもより弱ってる、気がする。


「ちゃんと生きてますかーーーーーーーーー!?」

『オフコーーーーーース!!私の生命力をなめてんのかゴルァ!!』


…なのにこの調子。

無理してんだか、してないんだか。


「ならよかった。ねぇ雅サン」

『だから何だっつーのー!!早く助けろこのクソ管理人!!!ここはどこじゃあああ!!??』

「わかってる、わかってるから。必ず助けるから。…だから少し落ち着いてえええええ!!」


大丈夫、大丈夫。

今は声しか聞こえないけど、彼女は彼女のまんまだ。

生きている。


『むきー!!わかったような口ききやがってー!!』



でも今は、



「はいはい。ホント、必ず助けるから、だから、うん。ちょっと待ってて」



雅サンが生きてることを喜んでる場合じゃない。



『…はああああ!?ちょ、待て置いていく気!?』

「(壁越しなのに怖っ…)だ、だってここにいても何もできないし…さ」



何か、方法があるはずなんだ。



『うぐ…』

「きっとすぐ戻ってくるから。信じてよ」

『うぐぐ…』

「ね?」



きっと見つけてみせるから。



『…………早く帰ってきてよ』

「うん、ありがとう。動いちゃ駄目だからね?」

『………………うぃ』


大丈夫、大丈夫。

雅サンはきっと助かる。

…違う。助ける、んだ。僕が。


『ねぇー』

「?」


彼女の声に、走り出そうと踏み出した足を止める。



『私、………どうなる、の?』



雅サンの辛そうなその言葉に、吃驚した。

やっぱり、無理してたんだ…。


「どうなるって…」

『私………光くんみたいに、なるの?』


追い討ち。

吃驚したどころじゃ、ない。どうしてそれを?


「な…ん……?」


声が、震える。


『優がね、……ずっと、悲しんでいた、の』

「ゆ…う…?」

『光のお姉ちゃん。私の大好きで大好きでたまらない親友。とっても優しい子』

「…」

『お願いだよ夢前君。彼女を…優を、これ以上苦しめないで…。私はどうなってもいい、ってわけじゃないけど、私が駄目なら、せめて光君を…助けてあげて?』



崖から転落。



……僕は、どうしてこんなにも人を簡単に傷つけてしまうのだろう。

それも深く、深く、残酷に、無責任に。


「……ジョ、…」

『…?』

「大丈…夫、きっと2人とも助けるから」



大きく1歩を踏み出して、僕は走り出した。

雅サンを助けるために。光を取り戻すために。

真っ暗な「夢」の世界を。





「大丈夫、すぐに見つけてくるから…」





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